合同会社の設立と設立後の手続き

税理士が主宰する会計法人として合同会社を設立しました。

短期間のうちに多くの事を行いましたので、忘れないうちに手順を記録しておきたいと思います。

会社の登記

会社の登記を行うにあたって、定款を紙でなく電子定款で作成すれば印紙代40,000円がかからない、ということでしたので電子定款を作成することにしました。

電子定款には電子署名が必要ですが、私は電子証明書を持っていないため新たに発行してもらわなければなりません。

マイナンバーカードを作成しようと思い、取得までどれくらいの期間がかかるのかをサポートに電話で問い合わせしてみました。

すると、「わからない。聞くところによると2、3か月かかっている人もいるようだ。」といったような返事であり、それでは全然間に合わないため諦めました。

「マイナンバーカードがなかなか普及しない」と言われていますが、欲しいと思ったときに申請してもできあがるのがいつになるのかわからない、ということだとそこで諦めてしまう人も多いのではないかと思います。

その後調べてみると、

freee会社設立

を利用すると5,000円で電子定款の作成ができることがわかり、これを利用してみることにしました。

Money Forwardクラウド会社設立

にも同様のサービスがありますが、今回は特に理由もなく「freee会社設立」を選択しました。

会社の設立にあたり最も「難しい」と感じるのが定款の作成ではないかと思います。

定款を一から自分で作成しようとすると、「何を書くべきなのか」「どのように書くべきなのか」について迷うことが多いと思いますが、「freee会社設立」を利用するといくつかの必要な項目を入力するだけで自動的に定款を作成してくれるので楽です。

定款に記載する「事業内容」の書き方で悩むことがあるかも知れませんが、自分なりに考えて記入してfreeeに提出すると、freeeが提携している弁護士法人が書き方をチェックし、必要があれば修正してくれます。

また、会社の印鑑の作成については、代表者印・銀行印・角印の3本が必要というように書かれていることが多いですが、私は代表社印しか作りませんでした。銀行印については、法人の銀行口座にはネット銀行を選ぶつもりであり、ネット銀行の口座開設には銀行印は不要だろうと思ったからです(実際に不要でした)。角印については、ほとんど使用しないだろうと思ったからです。

法務局に提出する書類は「freee 会社設立」で作成できますので、それを印刷して法務局に持って行きます。

「法人番号公表サイト」で確認すると、設立登記申請書を提出した2日後には法人番号が付与されているのですが、会社の登記が実際にいつ完了したのかはわかりません。

設立登記申請書を提出した際に通知された登記完了日に法務局に行き、印鑑カードを取得し、履歴事項全部証明書と印鑑証明書を取得しました。後述する電子証明書の発行もこの日に行えば法務局に行く回数が1回減ります。(電子証明書発行申請書の作成は前もってできると思います。)

税務関係の届出

最初にe-Taxの利用者識別番号を取得しました。これはいつも利用しているJDLの電子申告システムを使用して、他の顧問先について行うのと同じ手順で行いました。次にeLTAXの利用者IDを取得しました。

税務署(国)への届出

  • 法人設立届出書
  • 青色申告の承認申請書
  • 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

県への届出

  • 法人設立届出書

市への届出

  • 法人設立届出書

これらの届出はすべて電子申告で行いました。

地方税の届出は県や市町村ごとに様式が異なっているので、JDLの電子申告システムでは汎用的な様式になっています。それによると事業年度を記入する欄が「事業年度1」「事業年度2」と2段に分けてあり、それぞれ年号まで記入しないといけないことになっています。

ここの書き方がよくわからないのでJDLのサポートに聞いてみましたがJDLの方ではわからない、ということでした。

県と市の様式をそれぞれ確認してみると、元号の記入は必要ありませんがやはり事業年度の記入欄が2段になっています。

県と市に電話で確認してみると、どちらがどの回答であったか忘れましたが

  1. 上段の事業年度には設立の日と事業年度終了の日を記載し、下段の事業年度は空欄で良い(本来の事業年度は添付した定款で確認)
  2. 上段の事業年度には設立の日と事業年度終了の日を記載し、下段の事業年度には次の事業年度開始の日と事業年度終了の日を記載する

と異なっていましたので、上記1.の方法で統一させてもらうことにしました。(電話で了解してもらいました)

添付書類については以下の通りです。

税務署(国)へ提出する設立届 ・・・ 定款(「イメージ添付書類の作成」という手順を踏んでPDFファイルを添付する)

県と市へ提出する設立届 ・・・ 定款と履歴事項全部証明書(直接PDFファイルを添付する)

添付の手順は国と市・県とで少し異なりますが、JDLの電子申告システムでは書面を別途郵送する必要はありません。

法人口座の開設

インターネットで、「ネット銀行 法人口座」などで検索すると、

  • GMOあおぞらネット銀行
  • ジャパンネット銀行
  • 住信SBIネット銀行
  • 楽天銀行

などが検索結果に出てきます。

既に個人で住信SBIネット銀行の口座を持っており、法人の口座も住信SBIネット銀行で開設したいのですが、同銀行のQ&Aによると

「1台のスマートフォンで個人口座と法人口座のスマート認証NEOは併用できません。」

ということなので、スマホによる生体認証を利用しようと思ったら他の銀行で口座を開設しなければなりません。(他の銀行に同様の仕組みがあるのかどうかは確認していませんが)

スマート認証NEOで使用するスマホはインターネットに接続できれば良いので、室内でWi-Fiで利用するのであれば電話通信の契約は必要ありません(サポートに確認しました)。ですのでもう1台スマホ本体を購入すれば良いのですがそれもお金がかかります。

しかし他の銀行で口座開設の手順を確認してみると、法人の具体的な事業活動の実態を証明する資料の提出を求められますので、設立したばかりでまだ事業を開始していない段階での口座の開設は難しいと感じました。

そこで、まだ事業を開始していない、税理士事務所から会計業務の委託を受ける法人としては比較的申請がしやすいと思われた住信SBIネット銀行を選択し、スマート認証NEOの利用については今後考えていくことにしました。

今回は「法人オンライン口座開設」を利用しました。申し込みの翌日には口座が開設された旨の連絡があり、連絡の3日後には口座開設時に申し込んでいたカードが郵送されてきました。

「法人オンライン口座開設」では、スマホで顔写真を撮影したり首を動かして動画を撮影したりしなければなりませんでしたので、「法人郵送口座開設」の方が良いのかも知れません。郵送の場合には口座の開設には2、3週間かかるようです。

gBizID(法人用)の申請

社会保険関係の手続きの方法に「電子申請」というものがある、ということは以前から知っていましたが、まだ自分では一度もやってみたことがないので、これを機会に電子申請というものをやってみようと思いました。

「gBizIDプライム」を取得すれば電子申請ができる、ということでしたので「gBizIDプライム」の登録申請をしました。

gBizIDのページ

登録申請書を作成して印刷し、登録申請書に代表社員を押印し、印鑑証明書(原本)を添付して郵送しました。火曜日に申請書を郵送して金曜日には申請が承認されました。

電子証明書(法人)の取得

しかしその後調べてみると、手続きによってはgBizIDだけでは駄目で、電子証明書が必要なものがあります。

例えば社会保険の手続きで、健康保険・厚生年金保険新規適用届は電子証明書が必要になるようです。

→ 健康保険・厚生年金の手続きで電子証明書が必要になるもの

→ 労働保険の手続きで電子証明書が必要になるもの

→ 雇用保険の手続きで電子証明書が必要になるもの

(雇用保険についてはすべての手続きで必要になるようなことが2ページ目に書かれていますが、実際に手続きしたときに確認してみます。)

そこでどの認証局で電子証明書を発行するかを考えましたが、

電子認証登記所(商業登記認証局)

を利用することにしました。

書面申請とオンライン申請がありますが、オンライン申請には電子証明書が必要になります。前述の通り私は電子証明書を持っていないので、書面申請になります。

手続きは法務局で行うことになります。

  • 管轄登記所に届け出た印鑑を押印した電子証明書発行申請書(手数料分の収入印紙又は登記印紙を貼り付けたもの)
  • 証明書発行申請ファイル(CD,DVD又はUSBメモリに格納したもの)

を提出すると、15分くらいで電子証明書が発行されました。(「電子証明書発行確認票」が交付されます)

e-Govの利用

社会保険関係の手続きの電子申請は、「e-Gov」を使用して行うようです。

→ e-Gov

最初はe-Govのアカウントを作成しようと思いましたが、gBizIDでもログインできる、ということなのでgBizIDの登録が完了してから試してみることにしました。

gBizIDで、問題なくe-Govにログインできます。ただし、申請書を作成しようとするとエラーメッセージが出ました。

これが起きるのは、gBizIDの登録申請書に(入力が必須ではなかったので)連絡先電話番号を記入していなかったためです。

  • gBizID側で電話番号を登録する
  • 「申請者情報」及び「連絡先情報」を変更する

のいずれかを行いますが、「申請者情報」「連絡先情報」を変更するだけだと、別の申請書の入力をしようとするたびに「申請者情報」「連絡先情報」を変更しなければならないようですので、gBizIDの登録内容を変更した方が良いと思います。

また、前もって電子証明書をインポートしておく必要があります。

→ 署名用電子証明書の一般的なインポート方法

社会保険関係の届出の種類

従業員に税理士事務所と会計法人からそれぞれ給与を支払うことにする場合、提出する届出は以下の9つです。

e-Govの「手続きブックマーク」というところに作成が必要な届出をまとめておくことができます。

  1. 健康保険・厚生年金保険新規適用届、船員保険・厚生年金保険新規適用船舶所有者届(2019年5月以降手続き)
  2. 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届(単記用)(2019年5月以降手続き)
  3. 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届(単記用)(2019年5月以降手続き)
  4. 健康保険被扶養者(異動)・国民年金第3号被保険者関係届(2020年12月以降手続き)
  5. 労働保険保険関係成立(継続)(グループ申請)
  6. 労働保険概算保険料の申告(継続)
  7. 適用事業報告
  8. 雇用保険の事業所設置の届出(平成28年1月以降手続き)
  9. 雇用保険被保険者資格取得届(令和3年3月以降手続き)

このうち3.については、従業員が以前に所属していた会社の事業主が提出するものですが一応入れてあります。

社会保険関係の届出の提出時期

上記1.の健康保険・厚生年金保険新規適用届の提出時期について年金事務所に確認しました。

日本年金機構のホームページで確認すると、「事実発生から5日以内」と書かれていますが、この「事実発生」の意味がわからなかったためです。

すると、「給与の支払いを行う月の1日以降に提出して下さい」とのことでした。それより前には提出できないそうです。11月から給与の支払いを行うのであれば11/1以降の提出、ということになります。

また、この場合の「給与の支払いを行う月」というのは帳簿上給与が計上されている月と考えれば良いようです。ですから11月に実際に支払う分を11月に経費に計上するのであれば11月から給与の支払いを行う、ということになりますし、11月に実際に支払う分を10月に経費に計上するのであれば10月から給与の支払いを行う、ということになります。

上記の届出のうち2.から4.の提出時期については1.の健康保険・厚生年金保険新規適用届の提出時期に準じて考えればよいと思われます。

上記の届出の内5.から9.(7.を除く)については次のページに提出期限と提出先がまとめられています。

→ 労働保険の成立手続

7.の適用事業報告書については、「労働基準法の適用事業となったとき遅滞なく」所轄労働基準監督署に提出すれば良いようです。

労働保険の取り扱い

また、従業員に税理士事務所と会計法人からそれぞれ給与を支払うことにする場合の労働保険(労災保険と雇用保険)の取り扱いがよくわからなかったため、労働局、ハローワーク、労働基準監督署に確認しました。

それらによれば、

  • 労災保険は税理士事務所と会計法人の両方で加入する
  • 雇用保険はどちらか一方でしか加入できないのでメインとなる事業所の方で加入する

ということでした。

電子申請の電子署名 個人事業主と法人

前述の通り、税理士事務所と会計法人のそれぞれで労災保険に加入しなければならず、従って「労働保険関係成立届」を提出しなければならないことになりますが、電子申請で提出する場合には電子署名が必要です。

個人事業主と法人の代表者が同一である場合、

個人事業主の個人の電子証明書 → 個人事業主の申請と法人の申請のいずれも電子署名することができます。

法人の電子証明書 → 個人事業主の申請に電子署名をすることはできません。

個人事業主の電子申請に電子署名をしようと思ったら、やはりマイナンバーカードを取得して電子証明書を入手しなければならないことになります。

以前に届いていた「マイナンバーカード交付申請書」を取り出して、交付申請書に印刷されているQRコードを読み込んで交付申請を行いました。

e-Govのアカウント 個人事業主と法人

個人事業主と法人のそれぞれでe-Govを利用する場合、アカウントは分けなければならないのでしょうか。

e-Govのサポートに確認したところ、システム上は申請データのそれぞれで申請者情報を設定することができるので、必ずしも分ける必要はないようです。ただし、同じe-Govのアカウントで個人事業主の申請と法人の申請の両方を管理しなければならないので、わかりにくくなるかも知れません。

また、個人事業主と法人のそれぞれでe-Govのアカウントを作成する場合には、電子メールのアドレスを別々にするように言われました。アカウント=メールアドレスになっていると思いますので、同じメールアドレスで異なるアカウントを作成しないように、ということだと思います。

gBizIDのアカウントについては、アカウントを作成する最初のところで個人事業主と法人を区別するようになっていますので、自ずと別々のアカウントが作成されます。

法人用のgBizIDとは異なるメールアドレスを用いて個人事業主としてもgBizIDを取得して、それを使ってe-Govにログインすることにしました。

個人事業主の登録申請書を作成して印刷し、登録申請書に実印を押印し、市役所で取得した印鑑証明書(原本)を添付して郵送しました。今回は水曜日に郵送して、金曜日には申請が承認されました。

労働保険関係の届出 書面で提出する場合

労働保険関係の届出を書面で提出する場合、

5.労働保険保険関係成立(継続)(グループ申請)

6,労働保険概算保険料の申告(継続)

については用紙が複写式になっているので、用紙を労働基準監督署まで取りに行かなければなりません。

7.適用事業報告

については様式をダウンロードすることができます。

→ 主要様式ダウンロードコーナー

8.雇用保険の事業所設置の届出(平成28年1月以降手続き)

9.雇用保険被保険者資格取得届(令和3年3月以降手続き)

についてはハローワークインターネットサービスにて作成することができます。

→ 帳票一覧

 

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